終篇 神々の黄昏1


 光は生き返らなかった。
 光が取り戻される事を期待していた多くの種族達は、再び深い深い失望を瞳に浮かべる。
 神族も、人間族も、妖精族も、水棲族も、小人族も。
 ただ一人に、負の感情が向けられていく。
 邪神ロキ。
 光の神バルドルを生き返らせる事を、たった一人だけ望まなかった者。
 どうして、どうして、どうして!
 なぜ、なぜ、なぜ!
 皆が疑った、皆が嘆いた、皆が恨んだ。
 けれど、彼等は知らない。
 邪神ロキの選択こそが、もっとも正しい事を。
 彼等は知ることはないだろう。
 邪神ロキの選択が、光の神のたった一人の親友である彼にとって、辛く重い選択であったのかを。
 彼等は知ろうとしなかった。
 彼の想いを、辛さを、怒りを、哀しみを、憎しみを。
 彼は今、孤独だ。
 誰も、彼に寄り添える者は居なかった。
 愛する妻さえも、彼の隣に寄り添うことも、止めることも出来なかった。
 邪神ロキ。終わらせる者。
 彼はその名の意を表すため、自身の抱える多くの負の感情と共に。
 運命をまっとうする。

 ブォォォォ! ブォォォォ!

 ギャラルホルンが、この世界全土へと響く。

 ラグナロクが、来る。