青空でゆらゆらと穏やかに雲が動く空の下。
昨日から神族見習いとなったナリとナルは一頭の馬に乗り、これから彼等の働く神の国に繋がる虹の橋を悠々と走っていた。
「初日かー。緊張するね、兄さん」
「そうだな。まっ、色々あるとは思うけど……頑張ろうぜナル」
「……うん!」
お互い神族見習い初日に気合いを入れていると、ようやく神の国へ入る唯一の門に辿り着く。兄妹はその門の前に立つ一人の男、門番ヘイムダルに元気よく挨拶をする。
「「おはようございます」」
「……あぁ、おはよう」
ヘイムダルは兄妹と目を合わせずに挨拶をし、頂上が雲で見えないほど空高く建てられた門を彼は苦しむような顔をせずに易々と開けてしまう。
開けられた門に兄妹の乗った馬が入っていくと、ヘイムダルは先程と変わらぬ顔ですぐに閉めた。そんな閉められた門をじっと見つめる兄妹。
「挨拶、はしてくれたね」
「目合わせてくんなかったけどな。行くぜ」
「うん」
そうして門から離れ、兄妹はそのまま真っ直ぐ、この神の国の中央に建てられているヴァルハラ神殿へと向かう。
遠くからでもよく目立つ純白の神殿、背後には世界樹が君臨している様は、兄妹にとっていつ見てもその迫力に慣れないでいた。そうして、さらさらと広大な草原を抜け、地面が草原から石畳へと変化し神族の豪華な家や兵士達の寝床が建ち並ぶ場所に入る。そこには戦いをしない神族、主に女神達が笑みを零しながら笑っている。
そこを通り終えると、ヴァルハラ神殿がもう目の前にやってくる。
「ナリ様、ナル様」
と、何処から現れたのか数人の兵士達が兄妹の名を呼びながら前へと現れる。
「わっ、びっくりした!」
「ナリ様、ナル様。おはようございます。馬は俺達が小屋に繋いでおきますよ」
「お帰りの際はまた声をかけてくだされば連れてきますので」
「いえ、そんなの悪いです。今日から私達もここの一員ですし」
「いえいえ、これも私達の仕事ですので」
そう言って、手網をくださいと言いたげな手がナリに迫る。兄妹は仕方がないと諦めて兵士達に馬を預けてヴァルハラ神殿の前へと立つ。
兄妹はゆっくりと深呼吸をしてから、その扉を兄妹一緒に開ける。